荒木 秀典
「「すき」を実現できる社会を目指す文部科学官僚」「劇団と演劇教育に燃える文部科学官僚」
みなさん、はじめまして。
文部科学官僚で表現教育者の荒木秀典です。
私は『子どもたちが自分の「すき」を見つけ、それを発信し、実現できる教育・社会』を目指して、文部科学官僚として、表現教育者として公私ともに活動を続けています。
現在は文化庁に出向し、主に日本の文化施設(博物館・美術館・劇場, 音楽堂等)の在り方や未来、これからの政策について様々な取り組みについて検討・実施をしています。
また、表現教育者としては、自身の専門である即興演劇(インプロ)を用いて、主に学校(小中高大)で、子どもたちの共創性の育成やコミュニケーション向上、授業をより面白くするための支援(主権者教育×演劇など)を行っています。他にも演劇部の講師や学習発表会・文化祭等の伴走支援、各種教育イベントの主催等にも携わっています。
みなさんとは是非、一緒に明るい未来や「こうなったらいいな」について語りたいなと思います。一緒に明るくワクワクする社会を創りましょう!
ワーク
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あなたの今(またはこれまで)の仕事や活動の内容や、きっかけを教えてください
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自己紹介で「文部科学官僚」の顔と「表現教育者・演劇人」としての顔の2つをご紹介しました。実はこの2つは、私の人生ではとても深い繋がりがあります。
きっかけは小学校三年生まで遡ります。
私はテレビっ子でしたから毎日色々な番組を観ていました。ある時、母親の勧めでザ⭐︎ドリフターズ(いかりや長介・高木ブー・仲本工事・加藤茶・志村けんによるコントグループ)の「8時だョ!全員集合」の特番を観ました。この番組は昭和に放送されていたお笑い番組で、ちょうど母親世代でしたから懐かしかったんでしょうね。しかし、昭和のコントと言って侮るなかれ、はじめて観た時は腹が捩れるほど笑いました。本当に息が出来ませんでしたね。そこからドリフのコントをたくさん観ました。観ているうちに、自分もこんな風にみんなを笑顔にすることがやりたいなと思うようになりました。そして、舞台上でコントをする5人が本当にイキイキと楽しそうに見えました。自分も楽しくてみんなも楽しい、これ以上に素敵なことはないと思い、クラスにコント係を設立します。コント係とは、クラスのレクリエーションの時間にコントを披露する係です。(今思うとよく学級会で通ったなと思います。それほどに熱量がすごかったのですね笑)
そこから、演出や役者、脚本などドリフのコントを見よう見まねで勉強し、オリジナルの脚本をつくったり披露する期間が3年間続きました。そこから、笑いだけじゃなく、人間の喜怒哀楽を表現したいと次第に思うようになりました。
中学校には演劇部がなかったので少しブランクが空いてしまいましたが、高校生になり演劇部に入ります。高校生の頃は、部長も経験し、県大会では審査員特別賞も受賞しました。大学生になってもその熱は消えず、演劇サークルに入り、大学3年生の頃には劇団を2つ設立します。挙げ句の果てに、芸能事務所にも所属して、俳優活動に打ち込み始めます。
そんな演劇にどっぷりハマった荒木ですが、ある時、「芸術の力でもっと社会貢献できないかな?」と考えるようになりました。というのも、自分だけ、自分の団体だけが上手くなっても私たちの演劇で笑顔にできる範囲は高が知れていると感じたからです。実際に演劇人たちは少し内輪な気質があり、積極的に社会と関わろうとしない傾向にありました。しかし、演劇の持つ技術とは演劇を見せることそのものに終始するものではなく、もっともっと大きな力を秘めていると感じていましたし、何よりも勿体無いと感じていました。
そこで今までやっていた俳優活動を辞め、演劇を使った社会貢献はできないかと様々なことを試し始めました。そして辿り着いたのが演劇教育の世界でした。
演劇教育とは、演劇の持つ「他者と何かを共に創る喜び」や過程を通して、共創性や対話力、コミュニケーション能力の育成をめざす教育の一手法のことです。私は従来の型にハマった授業や教育でなく、子どもたちや子どもたち同士による価値の創出や子どもたちの個性と共創が織りなす教育を目指していきたいと考えました。特に子どもたちが「すき」を起点にした時のエネルギーは目を見張るものがあります。私はこういう活き活きとしたエネルギーが溢れる社会を創りたいんだなと感じました。
それをきっかけに教育についても興味を持ち、この国や社会を変えるために文部科学省に入省しました。
現在は文化庁にて勤務し、文化施設(博物館、美術館、劇場, 音楽堂等)の活性化を通じて、国民にとって文化がより身近になるように、またそこで活動する芸術家たちがより活動しやすいように、あるいは文化施設の運営者がより自由で創意工夫に富んだ施設の運営ができるように支援しているところです。
また、それと並行して、表現教育者として、各学校の先生方と協力しながら、探究学習や学習発表会の支援、また授業をより面白くするための支援(主権者教育×演劇など)を行なっています。加えて、演劇部講師や教育イベントの主催などにも関わっています。
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仕事や活動をする上で、どんな学びや経験・体験が役立っていますか?
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現場で働くまたサービスを受ける方々のことを想像しながら働くと非常に多くの学びがあります。
普段、官僚は東京の霞ヶ関のビルの中で仕事をしています。そこで多くの法律や政策などが出来上がっていくわけですが、私たちの役割は日本全体を俯瞰しながら国民の幸せや生活しやすさを考えることです。しかしながら、あまりに現場から遠いところにいると、現場やそのサービスを受ける方々にとって却って使い勝手の悪い制度が出来上がることがあります。また、日本全体の生活の場面に想いを馳せることが難しくなります。
だからこそ、その業界が実際にどうなっているのか情報収集をしていくこと、自分で足を運んで体験する必要があります。
私は学校教育に興味があって、文化庁にいる今でも、なるべく学校に足を運び教員や児童生徒の皆さんとお話しするようにしています。また、表現教育者として学校で実際に多くの授業をしていますが、ただ話を聞くだけでなく、実際に皆さんと授業をつくりあげることで得られる学びは何にも変え難いものです。
そういった知見は普段の仕事や多様な方と対話する際に、自分と見識を広げてくれる大きな糧になっています。
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仕事や活動に関してエピソードなどがあれば教えてください
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文部科学省には若手の職員が政策を立案し提言することができる制度(ポリメク)があります。ポリメクでは、政策を実現するために省内でチームを組み、普段の仕事とは別に独自に活動することができます。私はもともと「みらいの学校チーム(みらいの学校の在り方を検討)」と「コメクトチーム(教員と行政官を繋がる)」に入っていましたが、新たに「みらいアート+チーム(芸術の力で未来を明るくする)」を令和7年6月に設立しました。つまりはリーダーになりました。
年に一回、文部科学省の偉い人集団(難しい言い方をすると、トップである事務次官以下官房幹部が勢揃い)の会議で活動を報告する必要があります。普段の業務であればそんな方々に私が説明することはありませんから、本当に緊張しました。
なんとか5分程度の持ち時間の中で想いを幹部の方々にお伝えし、理解してもらえた時の感動はひとしおでした。
そんな方々とお話しできるのもこの職ならではかもしれませんね。
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あなたの仕事や活動で誇(ほこ)りに思うこと、やりがいや面白いと感じることは何ですか?
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やりがいは、日本という大きな視点で物事を考えることができるということです。普段の生活では、「日本の未来は〜」と考えながら生活している人の方が稀かなと思います。学校の授業を受けて、これは日本の未来に繋がる話だから◯◯しようと課題以外で考えることはほぼないのではないでしょうか?大人も同じです。私は民間で働いていた経験もありますから、よく分かりますが、なかなか日本全体のビジョンを描きながら仕事をするというのは難しいような気がします。
でも、官僚はそれを真面目に考えることができます。寧ろ、それが仕事です。
そこで考えた内容が法律や政策、制度等に落とし込まれて、実際に国民生活に溶け込んでいく様子は非常に面白いと感じています。それで皆さんから喜びの声を聞くことができた暁には、本当にやって良かったと感じます。
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今、一番がんばっていることは何ですか?
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芸術への敷居をいかに下げ、私たちの生活の傍らに芸術がある社会を実現するかというテーマについての取り組みを頑張っています。
これには二つの意味合いがあります。
①芸術活動(鑑賞・創作・発表等)にいつでも誰でも参加できること
②芸術の持つ力が社会に広く開かれていること
私が社会に芸術が溢れていてほしい、みんなに芸術に触れていてほしいと考える理由は、未来に希望を抱くことができるからです。
芸術というとどうしても大層なものと思われてがちですが、映画や音楽、演劇、絵画等に触れることで、普段歩いている道が「なんか猫の国に繋がってそう」のようにいつもと違うように見えるくらいで良いのです。芸術とは、何か創りたいものがあって創るだけでなく、自分や他者の発想や思いがけない発見を面白がること、そしてそれに気付き少しでも良いので自分の外に出してみることだと思います。
そのためには芸術の大層なイメージや難しいというイメージを払拭し、誰もが気軽に参加できる必要があります。
また、芸術の力は博物館や美術館、劇場等のハコの中に留まるものではなく、他者との価値観の違いを楽しむことやコミュニケーション力の向上、表現力の向上、難しいことを楽しむといった様々な効能を秘めていますから、それらがもっと社会に広く開かれる必要があります。
芸術という柔らかい力で社会に暮らす私たち一人ひとりが未来に希望を抱くことができたら最高です!
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仕事や活動で、将来実現したい具体的な目標や夢を教えてください
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個人の目標は、教育行政・表現教育のスペシャリストとして全国各地の教育行政や学校に関わっていくことです。自分の力が人に必要とされ、実際に役に立てるような人材になれたらいいなと思います。
また、表現教育や教育手法は、どうしても数学のような理系科目に比べて1+1=2のようにカチッとした理論が立ちにくい傾向にあります。(人をテーマに扱う分野なのでそれはそうなのですが、、、)しかしながら、何かしらのの方法で、教育手法について再現可能な評価方法や理論を確立できないかと思っています。今、挑戦として自身の活動を題材にした論文の執筆に取り組んでいます。それらが身を結び、大学教授などやれたらとても嬉しいですね。
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これまでの失敗や挫折(ざせつ)体験などを教えてください
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コロナ禍で演劇の公演も学校での授業の予定も全て吹き飛んでしまったのは正直途方に暮れました。そこまで積み上げてきたものが全て崩れたのですから当然です。
ただ、そこからコロナだからこそ出来ることを考えました。そこで辿り着いたのが、zoomを使って演劇をするということです。そのおかげで演劇を続けることができましたし、普段は会えない海外の演劇人と一緒に作品を創ることができました。
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将来の進路について悩(なや)んだり迷ったりしたときにどうやって決めましたか?
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私は自分の小さな「すき」に耳を澄ましてみました。そしてそれを素直に発信してみました。するといろいろな変遷は辿りましたが、なんとかここまで辿りつくことができました。
ただ、演劇を突き詰めていったら教育に辿り着いたというのは私としてはとても面白いなと思っています。
皆さんにもそういった出会いがあることを願っています。
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あなたの一日の流れを教えてください
時間
やること
8:00
起床
8:00
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8:30
支度
8:30
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9:30
通勤
9:30
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12:00
メールの確認・作業の整理・各所への説明(幹部や大臣・議員等)
12:00
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13:00
お昼休憩
13:00
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14:00
議員からの資料要求対応
14:00
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16:00
審議会や部会用資料の作成
16:00
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18:00
課内にお願いしていた作業の確認・整理
18:00
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22:00
国会対応(答弁作成・主意書対応等)・残作業
22:00
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23:00
帰宅
23:00
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24:00
就寝準備
24:00
就寝
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WEBページ・SNSなどはありますか?
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X(旧Twitter)で「荒木秀典」と検索してください。
ライフ
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小中学生のころはどんな子どもでしたか?
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「好き」なことに全力な男の子でした。とにかく全力でした。
小学校1年生の頃は工作がとにかく好きで、毎日のような家で作った作品の数々を持って行っては持って帰っていました。
八百屋さんをやりたくて野菜を作り、お金も作りみんなに来てもらったり、車ごっこがやりたくてダンボールを切り抜いて作った車で毎朝登校していました。
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小中学生のころ、好き(あるいは得意)だった教科・活動・遊びは何ですか?
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教科→社会(特に公民や政治経済)、国語、図工、音楽
活動→コント係(クラスでコントを披露する係)
遊び→ドッチボール、ケイドロ、ごっこ遊び
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好きなことや趣味(しゅみ)、ハマっているものについて、熱く語ってください
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私は演劇が大好きです。また、演劇を使った活動で周りの人が笑顔になってくれるのが大好きです。
私は「日常に彩りを。」という合言葉で活動を続けています。演劇をやる、観ることで普段何気なくみている景色に少しファンタジックな要素やドキドキワクワクを感じることができるようになれば、社会に少し余裕が出て、生きていくのが楽しくなるのではないでしょうか。(例えば、裏路地を見つけた時に、どこか異世界に繋がってそうだなと想いを馳せることができると日常が楽しくありませんか!?)
また、その余裕が次のイノベーションや新たなワクワクドキドキを生み出してくれると信じています。
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いま熱く語っていただいたことについて、エピソードがあればお願いします
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「日常に彩りを。」という合言葉で活動していますが、私は最近、「イマーシブシアター(体験型公演)」というジャンルの演劇にはまっています。今までの演劇は、役者を観客が観るという形態が主流でした。ただ、私はそれに加えて観客に体験を届けたいと考えています。イマーシブシアターでは、観客も演劇に参加し、役者とともにストーリーを創ります。観客の一挙手一投足が物語の結末に影響を与える公演の形態です。
以前、この公演を実施したとき、全く演技経験のないお客さんの顔が、気づけば役者の顔になっていたという出来事がありました。これは、それだけ没入してくれたという証拠ですし、全く演劇をやったことない人でも演技をすることができるんだなと、ある種規模になりました。没入を大切にして作品づくりをしてきた私たちにとって、この上ない喜びでした。
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人と向かい合うときに大切にしていることはなんですか?
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相手の良いところ探し、引き出すように話をきくことです。会話とは目の前の人と一緒に創り上げていく作品のようなものです。自分を前面に押し出しすぎることなく、相手と踊る気持ちで話を聞いてみると、ふと面白い発見があったりします。
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「絶対にこれだけはしない!」と心に決めていることを教えてください
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お互いにリスペクトを持てない相手と付き合い続けること。
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もし過去に戻れるとしたら、やり直したい、あるいはやってみたいことはありますか?
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高校生の頃に戻って、両想いだった女の子にちゃんと想いを伝えたいですね。
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新たにチャレンジしてみたいことはありますか?
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ギターを弾けるようになりたいです。かっこいいので!
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これからも大切にしたい生き方の指針(モットー)は何ですか?
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「日常に彩りを。」「難しいことこそ楽しく」
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生きている間に「これだけはやっておきたい」ことを教えてもらえますか?
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超高級すし屋でたらふく寿司を食べること。
閲覧してくれているみなさんへのメッセージ

このページを見ている皆さんは、きっと将来への不安やキャリアについて悩んでいる方が多いんじゃないかなと思います。
そんな時こそ、自分自身のささやかな「好き」に敏感になってほしいと思います。将来の夢なんて大それたものじゃなくて良いので、「コーラが好き」「夜空を見るのが好き」「散歩が好き」のような何気ない「好き」をどうか心に留めておいてほしいのです。
そして、夜空と言えば宇宙のように連想してほしいと思います。
きっとそこから自分を知る手掛かりと自分の広がりを見つけることができると思います。




はじめは「官僚」というのがかっこよくて、荒木さんのページに興味を持ちました。頑張って読んでみたけど難しくてわからないこともありますが、日本に住む人のためにできることを考えていることはよくわかりました。私は、身の回りの人や友だちのことを考えるのも精一杯で、クラスのことや学校のことと言われても正直考えていないように思います。だから、仕事でも日本に住むみんなのことを考えることはすごいなと思いました。
私は将来のことについてはぼんやりと「働かないといけない」ぐらいでしか考えていませんでしたが、荒木さんの言うとおり自分の好きなことが広がって自分の仕事につながればいいなと思いました。